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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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即興MENU#040「ロマンス」
即興040_ロマンス

 土の中にそっと小さな粒を置いてやる。やさいく土をかぶせて水をかけた。
 ベランダのよく陽があたる場所に植木鉢を置き、毎日それを眺めて、土がかわいたら水をやり、そのうちかわいい双葉が顔を出した。
 成長がずいぶんはやいらしく、一ヶ月もすると小さなつぼみを一つつけた。枝葉も伸びて、つる性らしく、ベランダの棚にくるくるとからまりながら育っていた。

 つぼみを見つけてから二日後の朝、青い八重の花が咲いた。にぎりこぶしほどもある立派な花で、無数の白い筋と一本の赤い筋のもようが花びらに入っていて、見たことのない種類だった。
 でも、一度だけどこかで見たことがあったと思い出した。

           * * * * *

 咲ききった花をつんで、胸にさすと、私はでかけた。そして、その家の前に並んだ同じ花が咲いた植木鉢を確認すると、インターホンを鳴らした。出てきたのは、同級生のタツヤである。

「なんだ。わりと早くたどりついたなぁ」

 そう言って笑った。この花、オレが交配させた新種なんだ、とも言った。

「引っ越し先のヒントがこの種一つってどういうゲームよ。私がこのへん来たことなかったら、解けなかったんだからね」

 私はタツヤの性格を知っているので怒ったりはしない。
 この花が、私への誕生日プレゼントであることも、もちろん分かっているのだから。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「土の中」
 お客さまの選んだ材料で、
 “土の中”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。

[お客様]…さわさきさん
[お題]…ロマンス
[創作日]…2009年4月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

摩耶山リュックサックマーケットにて)

常連のお客さま、さわさきさんからのお題です。
いつも、「鼻から牛乳」や「ヨン様」や「さわさき」といった一風変わったお題をいつもくださるので、今回のものは少しだけ意外でした。笑
でもこういったイメージの幅が広い単語は、ストーリーをまとめるのに結構時間を要したりします。
さらには元々、ロマンス…とうか恋愛ネタを上手く書くのはどうも苦手なので……(^^;
そんなわけで、今回はどっぷり恋愛ではなく、これから恋愛に発展するタネのような部分を描いてみました。
実はこのお話、前後に描かれなかった部分がたくさんありますが、あえて読者の方の想像におまかせする形にしました。(というか、そうなってしまいました。苦笑)
登場する二人の背景を、ぜひ空想してみてください。w
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#039「ほの字」
即興039_ほの字

 土の中から出てきたので、最初は木の実がくさったものか、肥料のかたまりかと思った。

 モスグリーンや茶色のそれらは、手で握ると音も無くつぶれた。もろい消しゴムのような感じである。いや、消しゴムのような弾力はないので、単に土をかためたもの、という方が近いだろうか。しかし土とは色味が違うのだ。

           * * * * *

 近くの山を散歩している時に、野草つみをしていて、たまたま見つけた謎のかたまりたち。4月のはじめのことだ。

 「何だろう」と鼻先に近づけてみる。特に肥料のようなくささもなく、あえて言うなら“風のにおい”というものが一番近い気がした。

 風が吹いて、何かの鳥が飛びたった。雑草らしき花に蝶が舞っていて、うぐいすらしき鳴き声もする。そんなものに触れていると、手の中の得体のしれない物体はどうでもよくなってきた。
 行くか、と立ち上がる。近くでバサッと何かが落ちる音がした。近づくと驚いたことに、五百円玉サイズの「ほ」の字が横たわっていた。さわるとまだあたたかいが、すぐにくずれて土になじんでいった。
 ケキョ。ホッケキョ。うぐいすが無く。まだへたくそである。そのたびに近くで物音がして、「け」や「ょ」の字を見つけた。あの謎のかたまりとそっくりな質感。


 あれば練習中の鳴き声が、うっかり落ちたものらしい。
 春はいろんなコトが、起こるものである。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「土の中」
 お客さまの選んだ材料で、
 “土の中”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。

[お客様]…似顔絵描きのテツさん
[お題]…ほの字
[創作日]…2009年4月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

摩耶山リュックサックマーケットにて)

お隣で出店しておられたテツさんからお題をいただきました。
お題の「ほの字」は「惚れる」という意味……だったはずなのですが、当店で調理した結果、「惚れる」が「ホーホケキョ」に変換されてしまいました。笑(ちょうど、うぐいすの練習シーズンだったもので……)
これもまた、お客さまとのコラボでつくる即興の面白さかなと思います。w

ちなみに、「ほの字」を検索するとやたら飲食店がヒットします。笑

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#038「木陰」
即興038_木陰

 土の中がこんなに気持ちいいなんて。

 訪れた客は皆そう言った。まるで木陰で昼寝をしているようだと。

           * * * * *

 あらゆる科学と経済と生活の発達と発展とともに、地球上の土地という土地は、建物とアスファルトと人で被われていった。気づけば背の高い木など皆無で、足元に人工の草花が生えているだけである。

 しかし人はそのうちに“公園や林の木陰ですずんでいた”頃をなつかしむようになっていった。その結果、あらゆる科学と技術とを駆使して、地下に木陰のような空間を作ってしまったのだった。どうせなら地上にと思うだろうが、地面の上にはもうそんなスペースは無く、空気も汚れていて空中は使い物にならなかった。

 人工的な太陽光と樹木が作り出す木陰であるが、地中ふかくの空気をじゅんかんさせていることと、一部の土肌をわざと見せる仕上げにしていることで、人々はまるで、まだ地上に木陰が存在した時のような感覚を味わえた。

           * * * * *

 ちなみに、あらゆる科学の進歩のおかげで、希望者は“冬眠”を楽しむオプションを使うこともできるそうである。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「土の中」
 お客さまの選んだ材料で、
 “土の中”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。

[お客様]…東京在住の男性
[お題]…木陰
[創作日]…2009年4月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

摩耶山リュックサックマーケットにて)

東京から神戸にいらしていた男性が、立ち寄ってくださいました。
物語のお引き渡し時に、ご自身で書かれた「木陰」というタイトルの文章を披露してくださいました!
それはある男性の恋を綴ったお話。
反対に、私の方は、こ~んなSF調のお話になっておりまして(笑)、同じタイトルとは思えません。w
最後の「冬眠」の下り、オチになっているのかどうかも、あやしいですが…。
即興ということで、こういうやや未完成な部分も合わせて楽しんでいただければと思います。

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#037「中之島」
即興037_中之島

 土の中から、ブリキの缶が出てきた。
 表の塗装はすっかりはげていて、何が入っていたものかは分からない。片手の平にのるくらいの小さな四角い缶カンである。さほど重くもなく、振るとサカサカと音がした。

 最近引っ越したマンションの一階の部屋が、かなり広い庭つきだった。片すみにサルスベリの木が植わっていて、その根元に光るものがあるのでほり出してみたら、さびた缶だったのだ。

 パコンと乾いた音がして、フタがあいた。中に入っていたのは、ビニル袋に包まれた紙切れだった。描かれているのは、よく分からない線画だ。しまのあるツチノコかと思わせるりんかく。
 字の情報は一切ないので、何を示しているのかさっぱりだ。こんなものが大事そうに缶に入っているとは。

           * * * * *

 謎の図面をしばらく眺めていて、私は突然、そのいびつな形が何であるのかを思い出した。よく知った地形だったのだ。

「中之島の地図……」

 同時に思い出したことがいくつかあった。
 幼少時代、私はこのあたり……大阪中之島の近く……に住んでいたのだ。いや、この場所に私の昔の家が建っていたはずなのだ。

 忘れていたけれど、この地図は私が親に書いてもらった近所の地図なのだ。

 「久しぶり」と、私は地図とそして父の植えたサルスベリに、話しかけた。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「土の中」
 お客さまの選んだ材料で、
 “土の中”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。

[お客様]…SHOPきつねさん
[お題]…中之島
[創作日]…2009年4月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

摩耶山リュックサックマーケットにて)

お馴染みのお客さんで、いつもは店長であるところの娘さんがご来店~なのですが、今回はお母さんがご購入です。
地名のお題は、その場所をどうストーリーに絡ませるのか思案するのですが、今回は私もよく知っている「中之島」という場所だったので、島の形を宝の地図風に見立てた物語にしてみました。
SHOPきつねのママさんは、とてもステキなパステル画を描かれる方です。山で絵を見せていただいて、「あ~、この絵に似合う物語とか書いてみたいな~」と密かに思っていたのでした(笑)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

残すお題文字もあと6つ。
2009年4月18日(土)に開催された摩耶山リュックサックマーケット

今回も「即興物語屋」を出店…………したのですが、到着が遅かったので、すでに山上は出店者でいっぱい。いつもの場所は当然空いていなくて、すみっこでまったり目立たず(笑)やっていました。

というわけで書いた作品はいつもより少なめで4つ。
今日から随時アップしてまいります。

テーマは「土の中」ということで、すべて「土の中」からはじまるお話です。

090418摩耶リュック看板

  *** *** ***

お題のひらがなはあと4つです。


「え」「つ」「の」「ら」「る」「わ」


つるの……
わ……

わらえつるの?(笑え、鶴野)
えらつのわる?(鰓、角割る)
わのつらえる?(我の面、得る)

↑↑↑
思わず遊んでしまいました。笑



090418摩耶リュック_桜

摩耶ケーブル下駅に行くまでの道に八重桜。
みっちり、みっしりと、咲いておりました。

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

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