FC2ブログ
書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
即興MENU~漢字シリーズ完成終了!
五月晴れの摩耶山で、
原稿用紙への照り返しと闘いつつw
漢字をお題で6作品、そして特別編として1作品を即興創作しました。

120519即興看板

また、即興以外での物語のオーダーも1作品いただきました。
ありがとうございます。

回文屋さんで書いていただいた回文の完璧っぷりがすごかったです。
(お題は「笛」です)
120519回文_笛


で、物語屋は毎度のことながら地味みたいです。
まあ、商品が陳列できないのでどうしてもねぇ(笑)
120519摩耶山リュックサックマーケット

今回は摩耶山PRのブースと合体してたので、立ち止まってくれる人がいつもよりは多かったかもw

作品は以下です。

●即興MENU#3-047「暑ノ話」(しょのはなし)


●即興MENU#3-048「夫ノ話」(おっとのはなし)


●即興MENU#3-049「菓ノ話」(かのはなし)


●即興MENU#3-050「筆ノ話」(ふでのはなし)


●即興MENU#3-051「生ノ話」(せいのはなし)


●即興MENU#3-052「真ノ話」(まことのはなし)


●即興MENU#3-053「終ノ話」(おわりのはなし)


●即興MENU#3-特別編「六甲山」(ろっこうさん)



「終ノ話」の記事には「始ノ話」をリンクさせているので、そちらを読んでから「終」を読んでいただく方が、つながりが分かりやすいかもしれません。
スポンサーサイト

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-053「終ノ話」


 物語を読み終えた私は、
 ぱたん、とその手帳をとじる。
 おや、と思う。
 古本屋で見つけた小さな手帳だったはずのものは、
 一冊の辞書に姿を変えていた。

 「漢和辞典」

 私が読んでいた数々の物語は、
 いったいぜんたい
 どこに消えてしまったのだろうか。

 いや、違う。
 物語は、この辞書の中にあるようだ。
 手に伝わってくるその形容しがたい
 複雑で面白い感覚。

 再びページを開こうとして、
 手を止める。

 次に読むべき者は、
 私ではないようだ。

 本棚にそっと辞書をさしこむ。
 物語を読む人が、また訪れた時に
 この辞書は開かれるに違いない。

 さようなら。

 古びた辞書の背表紙に
 そう告げて、
 私は古本屋を後にした。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)

長らく即興MENUの第3シリーズにおつきあいいただきありがとうございました。
お題を漢字一文字でいただく「漢字ノ話・五十三次」も、
「終ノ話」=エピローグを迎えました。
2010年10月からスタートして、約1年半かけてゴールです。

プロローグの「始ノ話」はこちらです↓
http://kswords.blog76.fc2.com/blog-entry-383.html


旅先で聞いた不思議な伝承や民話やうわさ話をより集めたようなイメージで紡いできたこの物語たち、漢字の持ついろいろな意味とともに楽しんでいただけましたなら幸いです。


  摩耶山の上で

  物語をお買い上げいただきました

  たくさんのお客様に、

  心より御礼申し上げます。



始と終は、最初から決めていたお題の漢字。
そしてこれらに51のお題をいただいて五十三次完成です。
みなさまのお題のおかげで、最後までシリーズをつなぐことができました。

次回の即興物語屋はどんなテーマでいくのか、実はまだ全く考えていません。
お客様と言葉の面白いコラボレーションができるようなテーマを何かお持ちしたいと思います。

また、摩耶山でお会いしましょう!

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU特別編「六甲山」
即興sp_六甲山

 めがねはぼくの宝物だ。

 でもぼくは、目が悪いわけじゃない。
 教室の一番後ろの席からでも、黒板の文字がくっきりと見える。

 このめがねは、前の学校を転校する時に、友達のユウタがくれたものだ。

 めがねを作ってくれたのは、ユウタのお父さんで、お父さんはいろんなものを発明してる人らしい。

「このめがね、特別だから。さびしくなったらかけてみろよ」

 そんなことをユウタは言って渡してくれた。

 別にさびしくなんて、ならないし、とぼくは強がってみたけれど、本当は転校するのはちょっとさびしかった。

           * * * * *

 新しい学校、一日目。
 まだあまりみんなと仲良くなれなくて、家に帰るとぼくはあのめがねをかけてみた。

 めがねをかけたまま、窓から外を見てびっくりした。

 そこには、前の学校の教室からよく見えていた山が、なつかしい六甲山が、はっきりと見えていた。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

「今回は特別編」

[お客様]…友人の長男くん
[お題]…六甲山(ろっこうさん)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


山口県から摩耶山に遊びに来ていた友人の長男くんからのオーダーをお受けしました。
漢字シリーズは終わった後だったので、「何かお題を決めて」とお願いしたら、ずいぶんと悩んで困って(笑)このお題に。
遠くにいてもまた六甲山・摩耶山のことを思い出してね、の思いをこめて書いてみました。さて、読んでくれたかしら?w

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-052「真ノ話」
即興3-52_真

 めがねをかけていたら本当、かけていなかったらうそ。

 でもドアをあけて入ってきたお客さんは、めがねをかけた紳士だった。

「なし。今のはなし」

 私はそうつぶやいて、ケイタイをにらみつける。
 アイスティーの氷はすっかり溶けてしまっていた。
 どのくらいこのカフェにいるんだろう。

           * * * * *

 子供だったら本当で、大人だったらうそ。

 カランと店のドアから入ってきたのは、小さな女の子で、そのあとで母親らしき女性が続いた。
 
「なし。今のもなし。だって、だってこんなの本当のはずないもん」

 ケイタイのメール画面には、彼からの別れの言葉。
 それをどうしても信じたくなくて、つまらないジンクス遊びをしては、一人で落ちこんでいるのだった。
 確率の高そうな方を、自分の希望する項目にしてるのに、ことごとくアテが外れてしまう。

 ふぅ、とため息をつくと、ヤケになってこう願ってみた。

           * * * * *

 次に入ってくるのが、女の人だったら、これまでのことは全て小説の中のつくり話!

 ドアが開く。

 入ってきたのは女の人だ。

 途端に願いは真実となり、すべては小説となった。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…常連Tさん(男性)
[お題]…真(まこと・しん)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


嘘からでたまこと、と言いますよね。
勝手なジンクスで真実と嘘を混ぜっかえしていたために、最後はちょっと神様にお仕置きされてしまったかのような主人公。
小説の中で、小説になった、という複雑?なオチで終わってみましたがいかがでしたでしょう?

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-051「生ノ話」
即興3-51_生

 めがねがとても、似合う人だった。
 もちろん外した顔も好きだったけど、ひとたびめがねをかけると、数段イイ男になるのだった。

 そんな彼も、もういない。
 私に残されたのは、この青いフレームのめがね一つなのだ。

           * * * * *

 彼とのつきあいは、それほど長くはなかったけれど、私たちはまるで三十年連れ添った夫婦のような気持ちで、最後をすごした。

 家族ではない私は、このめがねしか、受け取ることができなかったけど、それで十分だった。

 私がこのめがねを大好きだったことを、彼はちゃんと分かっていて、そのことをメッセージとして残してくれていたそうだ。

 彼が好きだったのは、私の家の小さな庭だった。
 縁側に座って、飽きもせずに眺めては、いいねぇと、くりかえした。

 そうだ。

 私は立ちあがると、庭へおり、彼が大好きだったキンモクセイの木の根元に、小さな穴を掘り、形見のめがねを埋めた。

           * * * * *

 あれから一年。

 めがねを埋めた場所から、小さな芽が生えてきた。

 その小さな命を育てることが、今の私の幸せである。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…初来店の女性
[お題]…生(せい・なま)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


お題をいただいて、ぱっと思いついたのは「生」と「死」。
切っても切り話せないこの二つの意味を盛り込んで紡ぎました。
私が描くとあまり重くならないので、うまく伝わるのか分かりませんが、
ひとつの終わりは必ず次の始まりに続いている、そんな循環の物語です。

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-050「筆ノ話」
即興3-50_筆

 めがねが、人気である。

 しばらく前に、メガネ男子だの何だのが流行ったこともあったけれど、そういうものとは違って、本当にめがねそのものが人気なのである。

 最近では、ほとんどの人が、複数のめがねを使い分け、服を着替えるように、毎日めがねをかけ替えるのである。

 もちろん人類が皆、視力低下で……という話ではなく、むしろ医学の進歩で目が悪い人の方が少なくなってきたほどである。

 めがねフレームのデザイナーは、今や人気の職業で、数多くのデザイナーによる様々なめがねが、市場に出まわっている。
 その中で、最近、特に注目されているフレームデザイナーがM氏である。

           * * * * *

 M氏の工房は公開されていない。
 M氏そのものも、男か女か分からない。
 表には絶対、姿をあらわさないのだ。

 工房の中でM氏は、姿勢を正して筆をとる。
 そしてするすると半紙に筆をすべらせる。

 そこに描かれたのは、新しいフレームデザインだ。
 その半紙を水に浸す。すると、たちまちのうちにフレームは実体化するのだ。

 不思議な筆と、M氏のセンスと能力は、今日もまた新しいめがねを作り出していく。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…Sさん(女性)
[お題]…筆(ふで・ひつ)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


こちらも贈答用のお話です。
筆に関わるお店(お仕事?)をされている方へ贈られるとのこと。
さて、このドラえもんの道具のような便利な筆。
M氏の能力がすごいのか?あるいは筆職人がすごいのか?
実のところはどちらもすごくて「能力がある人が使わないと筆の力は発揮できない」という設定です、私の中では(笑)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-049「菓ノ話」
即興3-49_菓

 めがねをかけるのを忘れないように、と受付で強く言われた。
 指示された道を行き、トンネルをぬけたところに、巨大な温室があらわれた。

 「菓(か)」と呼ばれる砂糖の、原料となる果物は、この温室でしか育たない。
 お菓子作りに最も適した砂糖である「菓の粉(かのこ)」は、その流通量の少なさで値がとても張る。
 でもこの粉を少しでも使えば、完成したお菓子の味が、ぐっといいものとなる。
 いや、味だけでなく、見た目からおいしさのオーラが出るほどなのだ。

           * * * * *

 幸運にも何度かこの「菓の粉」を使ったお菓子を口にする機会があった私は、この不思議で魅力的な味にとりつかれてしまった。

 そしてようやく、その栽培地の見学を、今日することができるのだ。

           * * * * *

「菓の粉の原料となる果物は、数種類ありますが、どれも決して肉眼で見てはいけません。とても不思議な性質なのですが、菓の甘さというのは、味でも匂いでもなく、ほとんどが目から吸収されるのです。もし温室でこの専用めがねを外してしまったら、あの甘さに負けて、もう出られなくなるかもしれませんから」

 係員の言葉が耳に残る。

 私は、めがねを外したいという誘惑に、勝てるだろうか。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…Sさん(女性)
[お題]…菓(か)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


お菓子屋さんへの贈り物でご注文いただきました。
ちょっとだけひねって、パティシエの話ではなくお菓子の原料のお話になっています。
何だか少し危険な香りがする菓の粉ですが、主人公は温室でめがねを外さずにいることができたでしょうか?

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-048「夫ノ話」
即興3-48_夫

 めがねを読書用のものにとりかえて、夫のいつもの夜の時間がはじまる。
 好きな本を読みはじめると、もう何を話しかけてもダメなのは、長年のつきあいで知っている。だから私は私なりの、好きな時間をすごす。

           * * * * *

 世の中の結婚のシステムが大きく変わったのは、もうずいぶん昔のことらしい。
 パートナーの選択権は、女性にのみにあり、長い年月を経て女性の直感力はかなり高まり、うまくいかない相手を選ぶことはまずほとんどない。

 もっとも、それまでにあらゆる情報によってコンピューターがよりよい相手を適切に絞りこんでいてくれるのだが。

 登録する時に、最も重視される情報は味覚である。
 どんな味のものを食べて育ってきたか、何の料理が好きか、こと細かにアンケートにこたえるのだ。
 食べ物、というのは、人の営みの根底にあるものだから、そこが合えばたいていのことは何とかうまくまわるというのだ。

 たしかにそうらしく、私も夫とのケンカの仲直りは、おいしいものを食べること。

           * * * * *

「ところで、オレを選んだ決め手って何だったの?」

 夫が思いついたかのように聞いてくる。

「そうねぇ。めがねをかけた横顔に、ピンときたのかな」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…Sさん(女性)
[お題]…夫(おっと・ふ)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


結婚30周年を記念して、ご主人に贈られるという「夫」の話。
Sさんはとっても素敵なご夫婦で、そして食べ物へのこだわりやセンスも素敵な方。
そんなところからイメージしながら、でもちょっと近未来?な設定も盛り込んでみました。
ご主人のご感想、ぜひ今度聞かせてくださいね。

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#3-047「暑ノ話」
即興3-47_暑

「めがね…だよな?」

 男は、それを手にとると眺めまわして、ひとりごとをもらした。
 丸い板を二つつなげたような形はたしかにめがねのようだったが、不透明な板なので、かけても向こうが見えそうにはない。

「あれかな……日食めがねというやつかな…」

 旧家の蔵で、ぐうぜん見つけたそのめがねを男はその場でかけてみた。
 すると。

           * * * * *

 ピラミッドと砂漠である。
 ラクダの群れも遠くを歩いている。

 そんな風景が、めがねの向こうに見えたのだ。
 驚いて外すと、またおそるおそるめがねをかけてみる。
 すると。

 ゾウの群れが目の前を横切って、思わず腰をぬかしそうになる。
 その景色はどう見てもサバンナである。

 次に見えたのは、照りつける太陽の下の青い海と空。

 めがねをはずして、ふう、とため息をつく男の額は、汗でぐっしょりとぬれている。

「どうやら、暑い国しか、見えないみたいだな…」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…回文屋アリクシさん
[お題]…暑(しょ・あつい)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


リュックで書き物お仲間な回文屋さんからお題をいただきました。
(私も、回文屋さんに注文して、物々交換ですw)
暑い異国ばかりが見えてしまうメガネ。
これからの季節にはちょっと不向きかもしれませんけど、冬の寒い時に見たら、多少は暖がとれるでしょうか?(笑)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

Twi-Story44「職務質問」
「ちょっと鞄を見せてもらえますかね」

警官の制服を着た男が行く先を阻んで言う。

やましいことは無いから
逆らわずにおくかと開けて見せると、
にゅうっと男は鞄に吸い込まれ、
持ち手をつかんだ右手から俺の体を乗っ取りやがった。

まさかこんな風に宇宙人の侵略が進んでいるとはね。

==========
Twitterでつぶやいた小さなお話。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。