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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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即興MENU#4-13「みょうが」
みょうが

 青い屋根、青いドア、窓枠を青色で統一されていて、ホントに「絵本に出てきそうな家」だった。

 私も夫も、青は大好きだったし、あんな家に住んでみたいよね、といつも話していたのだ。

           * * * * *

 その青い家が、売りに出されていた。

 駅から少し遠いこともあって、多少の無理をすれば手が届く値段で、私たちは迷わずそこをマイホームにしたのだった。

 不動産屋に「ところで、みょうがはお好きですか」と変な質問をされたが、それを除けばいたって普通の、いや普通以上の、いい買い物だった。

 小さな庭もついていた。
 いろいろ植えてみたいね、と、二人で話していたら、すみっこに、笹のようなものが生えてきた。

 そのうちにそれは、どんどん成長して増え、庭の三分の一くらいを埋めつくしてしまった。

 何だろうと思っていたら、夫が言った。

「これ、みょうがだよ」

           * * * * *

 根元あたりに、つぼみのような形の花芽がたくさん。
 不動産屋の言ったことが、ようやく分かったのだった。

 それから私たちは、みょうがに困らない。
 前の住人は苦手だったみたいだけど、私たち夫婦は、大好物なのだ。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…スリランカカレー屋カラピンチャのご主人
[お題]…みょうが
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


日本の香味野菜のひとつ、みょうが。
私も大好物なのですが、畑で実際に育てたことがあって、その実のつきかたを初めて知ったときは割と衝撃でした。
そんなみょうがが勝手にどんどんできてしまう庭つき一戸建て。
いかがでしょうか?(笑)

スリランカカレー店・カラピンチャHP
http://karapincha.jp/blog/
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-12「たこ焼き」
たこ焼き

 青いの、赤いの、ラメ入り、しましま。

 四角い缶のフタに並べられた色とりどりのスーパーボールを、ころころと回転させながら遊んでいる。

「たこ焼きくださいなー」
「はーい、ちょっとまってねー」

 幼稚園くらいの女の子と男の子が楽しそうにやりとりをしている。
 夏祭りの屋台でたこ焼きを食べたのだろうか。
 店の人の手さばきが面白く見えたのかもしれない。

 かわいいね、たこ焼屋さんごっこしてるよ。
 そんなことを言いながら、通行人がほほえましく見ている。 

           * * * * *

「こんにちは。おいしそうなたこ焼だねぇ」

 老婆が子どもたちに声をかけた。
 知らない人には気をつけるように言われているけれど、その人は全く悪い人に見えなくて、子どもたちも思わず「いらっしゃいませー」と返してしまった。

 「もっとおいしくしてあげようか」
 と、老婆は指先をすっと向けた。
 するとボールはほかほかの本物のたこ焼になったのだった。

「すごーい、どうやったの!」
 と、はしゃいでいた子どもたちは、しばらくすると、元に戻してと泣きはじめた。
 あれはお気に入りのスーパーボールだったのだ。

 ボールに戻して、老婆は去りながら、「魔法も使いづらくなった」とため息をひとつ。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…初来店の女性
[お題]…たこ焼き
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


たこ焼きとスーパーボールのイメージがふっと重なったので書いてみました。
偶然にも、お客様がリュックに来る前にお子さんとスーパーボールで遊んでいたそうで、書いてからそれが分かって何だかびっくり。
見えない何かが共鳴したのかしらん?w
それにしても魔法使いのおばあさんもいろいろご苦労があるようで(笑)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-11「レモン」
レモン

 青色のリトマス紙に、レモン汁を一滴たらすと、そこだけが赤色に変化する。
 何だか面白くて、次々とたらしてみては、色の変化を楽しんでいた。

「こら、そこ何やってるんだ!」

 怒られたとたん、目が覚めた。
 なつかしい夢をみていた。
 理科の実験でよくあんな風に、先生にどなられてたなぁ。
 そんなことを想いながら、あ、そうか、レモン汁か、と思い立った。

           * * * * *

 昨日、娘から届いた手紙を広げてみる。
 単身赴任中の私は、妻と幼い娘と離れて暮らしているのだ。

 たしか、こうやればいいんだったよな。

 コンロに立ち、弱火にすると、手紙が燃えないように気をつけながらあぶってゆく。
 何も書かれていなかった白い紙に、徐々に文字が浮かんでくる。

「おとうさんへ おしごとがんばってね。 まいはおとうさんがだいすきです。」

 思わず笑みがこぼれる。
 娘は私に似て、理科といたずらが好きらしい。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…短歌と詩を作る平田さん(女性)
[お題]…レモン
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


お題をくださった平田さんは、何と東京から夜行バスで神戸の摩耶山リュックに出店するためにやって来たというエネルギッシュな方!
文学フリマをはじめとするいろんなイベントに出かけては出店という、一人弾丸ツアーをされているそうです。
そんな平田さんからいただいたレモンのお題は、ちょっとだけ理科の要素を入れつつも、ほっこり親子のお話にしてみました。

平田真紀さんのHP
「闘う短歌のサイト 短歌の森」
http://polarism1.exblog.jp

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即興MENU#4-10「すいか」
すいか

「青いのがあってもいいじゃんかよぅ」

 若い男が、多少ろれつのまわっていない口調で主張する。
 すいかの話、である。

「赤と黄色があるんだからよぉ、青もつくってみろってんだよぅ」

 酔っぱらいの話なんて、ほんとにどうでもいいことで盛り上がるものだ。
 男はやたらと青いすいかを声高に叫び続けた。周りのメンバーはうんざりした顔で、適当にあいづちを打っていた。

           * * * * *

 翌日から、男の手にふれたすいかは青くなった。

 置いてある時は赤くても、男がさわると見る間に青くなってしまうのだ。
 まるで「お前が青いすいかを欲しがってただる」と言わんばかりに。
 しかし青い実は、その色は、まったくもって食欲をそそられないのだった。

 うわぁ、と声をあげたと同時に目がさめた。

           * * * * *

 そこはまださっきの居酒屋である。
 夢か、とため息をついた。

 デザート、どうぞ。と運ばれてきたものは、まっ赤に熟したすいかだった。
 男はおそるおそる手をのばす。
 すいかの色は赤いままだ。

「青いすいかなんていらねぇよ」

 そう言いながら、勢いよくかじりついた。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…すいか
[お題]…Sさん
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
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うっかり言ったことが現実になって苦しむシリーズ(笑)ですw
やっぱり青いすいかって、ナシですよねぇ〜。
でもせっかくなので、赤・黄・青と、信号みたいに並べてみたかったかもw

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-09「いなりずし」
いなりずし

 青いお弁当箱に、いなりずしを五つ、ていねいにつめると、ふたをして、手ぬぐいで器用に包んだ。

 マサコさんは出かける用意をすると、鞄の底にお弁当箱をひっくりかえらないようにそっと入れた。

 弁当箱は息子が幼い頃に使っていたものだ。
 その息子は今はもう、二児の父親で、夫に先立たれたマサコさんは、今は一人で静かに田舎で暮らしている。
 去年までは、一人と一匹だった。
 愛犬のゴロウは病気でなくなったのだった。

           * * * * *

 マサコさんの行く先は、町のはずれの稲荷神社である。
 そこにあるおキツネ様の石像の一つが、ゴロウにとてもよく似ていて、そのことに気がついてから、いなりずしをお供えするようになったのだ。

 お供えをして、辺りを散歩して戻ると、皿の上は空っぽになっていて、何となく、ゴロウがあの世から食べに来てるのではないかと、そんな気がしてひんぱんにいなりずしを持って通っていた。

           * * * * *

 食べていたのは、ゴロウではなかった。
 裏山に住むキツネの一家であった。

 マサコさんが通いはじめて百日目、神社の化身であるところのキツネ一家は、マサコさんの願いをかなえてあげることにした。
 いわゆるお百度参りと似たようなものである。

 今日の帰り道、マサコさんは、ゴロウによく似た子犬をひろうはずだ。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…Tさん(男性)
[お題]…いなりずし
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
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子どもの頃、遠足のお弁当の定番が「いなりずし」でした。
そんなことを思い出しながら、書いてみました。
珍しく、登場人物に名前があります。即興モノは、「私」とか「彼」とか「男」というような呼称が多く、名前がつくことはあまり多くないのですが、今回イメージが浮かんだ年配女性は、なぜだか絶対「マサコさん」だと思ったのです(笑)

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-08「アイスコーヒー」
アイスコーヒー

 青い空、青い海、いかにも夏、という風景の中で、男はゆったりと時間をすごしていた。

 手元のグラスの中で液体がゆれる。
 休暇も明日までなので、今日一日、この海辺のペンションでのんびりしようと思っていた、

           * * * * *

 男は少し珍しい病気をわずらっていた。
 いや、病気というか、症状というか、他にはあまり例のないことで、ただ命にはまったく別状ない類のものなので、放っているのだった。

 実際検査では、異常は見つからないのだ。
 グラスには、黒くきらめくアイスコーヒーが入っている。
 ミルクやフレッシュは入れず、少しのシロップで飲むのが、男の好みだ。

 目をとじてグラスをかたむける。コーヒー豆のいい香りがすうっと口の中に広がる。
 よほどコーヒーが好きなのだと思われるかもしれない。
 たしかに男はコーヒーが好きだが、目をとじるのは別の理由がある。

           * * * * *
 コーヒーの色が青く見えてしまう、というのが、男の困った症状である。

 青い空、青い海、青いコーヒー。

 コーヒーが香りを楽しむ飲み物でよかったと、目をとじたままアイスコーヒーを飲み干した。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…青空カフェ・Sさん(男性)
[お題]…アイスコーヒー
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


青い食べ物って食欲を減退させると、言いますよね。
いくらいい香りがしても、味がおいしくても、見た目が青かったら台無しとか。
大好きなコーヒーが青くまずく見えてしまうという可哀想な男性ですが、香りのよさに救われているというお話でしたw

青空カフェさんのブログ
http://ameblo.jp/aozoracafe-rokko/

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-07「豆乳」
豆乳

 白い砂浜に、それは打ち寄せられていた。

 砂浜よりもっとずっと白くて、丸くて平べったい。
 手の平サイズの大きなおはじき、といった様相である。

 一人の女性が手にとる。
 つるんとしていて、プラスチックでできた何かという感じだが、何故かそれは人工的な色味とは思えなかった。

 彼女は好物の豆乳の色に似てるなと、しばらく観察したあと、何となくまた、海に戻したのだった。

           * * * * *

 ずっとずっと未来のある場所では、係の男が上司に怒られているところだった。
 そこは食品博物館。
 彼は展示物を一つなくしてしまったのだ。

 それは豆乳の塊だった。
 あの拾った女性のセンスはなかなかいいところをついていた。

 すっとずっと遠い未来、ある原因で食料品がその姿を次々と失っていくことになる。
 もちろん進んだ科学の力によって、人工的な栄養カプセルは用意されたが、人々はやはり、食べ物の色や形や質感をたのしみたかった。

 いつかまた食品を復活させられるようにと、ありとあらゆる最後の食べ物が、特殊な加工をされて食品博物館におさめられた。

 研究は日夜進んでいる。
 いつの日か、過去の海をただよう白い豆乳を、飲むことができるだろうか。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「白」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “白”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…初来店の女性
[お題]…豆乳
[創作日]…2012年7月21日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雨天で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


初摩耶山、初来店の女性に真っ白なお題をいただきました。
美味しいほんわかした話を書こうかなと、一瞬思ったのですが、なぜかこんな未来のお話になってしまいました。
こういう設定を考えるのはとても楽しいんですけどね♪

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-06「ねぎトロ」
ねぎトロ

 白いごはんにたっぷりとかかったネギトロ。
 大盛りのネギトロ丼を前にして、男は満面の笑みを浮かべている。
 彼はネギトロが大好物なのだ。

 ものすごい勢いで、ネギトロ丼をかきこむと、口いっぱいにネギトロをほおばり、「毎日ネギトロでもいいなぁ」とふと考えてしまったのが、どうやら原因らしい。

 翌日から男の前に、ネギトロが次々と現れるようになった。

           * * * * *

 トーストとコーヒーを用意していたはずの朝食の食卓には、ネギトロの軍かん巻きとマグカップいっぱいのネギトロ。
 焼いたトーストも、マグカップの中のコーヒーも、姿を消していた。

 訳のわからないまま、作り直し、正体不明のネギトロは、さすがに気味が悪いと捨ててしまった。

 時間を気にしながら洗面所へ向かい、ハミガキチューブをぎゅっと絞ってあぜんとする。
 出てきたのはネギトロだ。

 ふと鼻先にマグロの香りがただよってくる。
 浴室からだ。

 おそるおそる浴そうのフタをめくってみる。
 そこには満杯のネギトロが……。

           * * * * *

 うあぁ、と叫んだところで、目が覚めた。

 時計を見ると、会社の始業時間はとうに過ぎていた。

 その後しばらくは、男はネギトロを口にしなかったという。

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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
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【作品DATA】

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 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “白”ではじまる短いお話を
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 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…Rくん(小学生男子)
[お題]…ねぎトロ
[創作日]…2012年7月21日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雨天で公式中止となりました。
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小学生男子、なぜこんな渋いお題ばかり(笑)
ネギトロ好きのRくんに、たっぷりネギトロを堪能していただこうと書いてみました。
後で読んだ感想を聞くと、どうやら大ウケしてくれたみたいで、いやーよかったよかったw

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-05「そばめし」
そばめし

「白さが、イマイチ、思ってたのとちがうのよねー」

 妻がぼそりと言った。
 通販で注文した大皿が、今日届いたのだが、写真で見たのとは、色が少しちがうらしい。

 うーん、こうなったら、もう自分で焼こうかしら。

 そんなことをつぶやいていたと思ったら、翌週末から本当に陶芸教室に通いはじめたのだった。

 大皿なんてものは、素人がいきなりうまく作れるものじゃないはずだが、妻は根気強く作り続けた。
 最初の頃は、そもそも大皿にすらなってなかったが、コツコツと習ううちに、そこそこの大きさの皿ができるようになり、そうすると次は色にこだわるようになった。

 他の生徒さんは、絵付けにこったりしていたが、妻は、ただ白い、真っ白い皿を作りたいとがんばった。

           * * * * *

 そして、とうとう、大きくて真っ白な皿が、できあがったのだ。
 それは、妻自身が割ってしまったお気に入りだった皿に、とてもよく似ていた。

 さあ、とはりきって台所に立った妻。
 食卓には、真っ白な皿に山盛りの、そばめし。彼女の好物なのだ。

「これが、やりたかったのよね」

 妻はとても満足そうである。

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本日の創作メニューは「白」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “白”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…Sさん(女性)
[お題]…そばめし
[創作日]…2012年7月21日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雨天で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


ソースもの、関西人としては欠かせないですよねw
私も、たこ焼きからお好み焼きから焼きそばからそばめしから…とそのあたりは何でも大好物。
濃いソース色は、きっと白いお皿によく似合うと思ってこんなお話に。

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

即興MENU#4-04「神戸牛」
神戸牛

 白髪を見つけた。

 おっと、これはいけない。と、オレはぷつんとそいつを引き抜く。
 まだ見かけは十七歳くらいなのだ。こんなに白い毛があるのは似合わないだろう、しかもまゆ毛に。

 鏡を見ながら、服をえらぶ。
 ちゃんと十代に見えるようにしなければ。

 つい最近まで、八十三の年寄りの体に入っていたもんだから、センスがついていかないのだ。

           * * * * *

 オレは実体をもたない。
 食べ物に執着を残して死んだせいで、いろんな人の体にのりうつれる体質になってしまったのだ。
 こんな霊もめずらしいかもしれない。

 死んでなければ、もう三百二十五歳になるはずだ。そりゃ白髪もうっかり出るよな、と思う。

           * * * * *

 さて、そろそろホテルの部屋を出るか。
 オレは全国をまわりながらあらゆるうまいものを、食べてまわっている。

 金はどうしてるのかって?

 そこはあまりくわしくは言えないが、ちょっとした財産をかくし持ってたんだな。

 最上階のレストランに入る。
 見た目の若さにちょっと不審な顔はされるが気にしない。

「特上の、神戸牛のステーキを」

 この瞬間がたまらなく幸せだ。

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お客様に「材料」=お題を決めていただき、
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実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
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明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

【作品DATA】

本日の創作メニューは「白」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “白”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…回文屋さんの営業部長(小学生男子)
[お題]…神戸牛
[創作日]…2012年7月21日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雨天で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪



リッチなお題、神戸牛。
小学生からこのお題が出るところがなかなかw
若いけど若くない。そんな要素を盛り込んで、物語をひとつ。

回文屋さんのサイト
「偶然の図書館の別館」
http://biblioteca88.blog69.fc2.com

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