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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
即興MENU#2-019「ライター」
即興2-19_ライター

「芽が出たんだってさ」

           * * * * *

 その男は、やたらとライターを持っていた。もちろんタバコを吸うから必要な道具ではあるが、店でもらったり、人にプレゼントされたり、外出先でたまたま手元になくてつい買ったり、そうこうしてるうちにライターだらけになり、専用の箱にびっしりとつまっていた。

 それだけ集まると、ライターだって会話なんてものをしはじめる。もちろん、人間には聞くことはできないが、もし彼らの声が聞けたらなら、それはなかなか興味深い内容である。

           * * * * *

 前の持ち主と見聞きしたこと。店のテーブルで体験したいろいろ。人の身近にいるライターたちの話題はつきることがない。

 あるライターが、昔知り合った古いライターのことを話しはじめた。

「オイル切れでさ、しばらく使われずに放っておかれたあと、引っ越しのゴミに紛れて捨てられる途中で、空地に落っことされてさ、長い間そこの放置されてたら、ある日、芽が出たんだってさ」

 野ざらしにされて、その体にいつの間にか入り込んだ土と水と種子。芽は育って、小さな白い花を咲かせたという。

 いつか、火をつけることができなくなったら、そういう第二の人生もいいかもしれないな、と別のライターが言った。
 そうだな、と、誰かが言った。
 
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これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「芽が出た」
 お客さまの選んだ材料(=持ち物)で、
 “芽が出た”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。

[お客様]…近くで出店されていた男性
[お題]…ライター
[創作日]…2010年5月15日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
摩耶山リュックサックマーケットにて)


ご新規さまです!
摩耶山リュックの記念にと、いろいろなお店でたくさんお買い物されてました。
物語屋にも来て頂いて感謝!
ライターをたくさんお持ちで、じっと見ていたら、ああ、何かおしゃべりしてそうなコたちだな……と思えてきたので、それをストーリーにしました。
ちなみに私、モノにも絶対意識はあると思っているので(つくも神という考え方も昔からありますし)、きっと見えないトコでみんな会話を楽しんでるんじゃないかと信じております(笑)
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