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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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Story in a Bottle
Story in a Bottle


 「Story in a Bottle」

  
     小さなボトルの中に
     とじこめられた、
       小物と
     それにまつわる
     小さなお話を7つ。



Story#1「ボルト」

俺のポケットにはボルトがひとつ入っている。
若い頃、小さな会社をおこした。
収益がほとんど出なくても、
ただただ仕事が面白くて、
無我夢中で過ごしていた。
しかし経営の才覚は無かったらしい。
最後の日、
がらんとした事務所に転がっていたスチール棚のボルトを、
俺はいまでもずっと持っているのだ。




Story#2「黄色い色鉛筆」

「これ」とリサが差しだしたのはちびた黄色い色鉛筆。
「いまさらだけど、犯人は私」
小学一年の図工の時間、
きりんを描こうとした私の色鉛筆の中から
こつ然と黄色が消えた。
黄色が無いときりんが描けない。
泣き出した私は先生から黄色を借りたのだった。
「下書きがあんまりうまいから、ちょっとうらやましかったの」



Story#3「花模様のガラスビーズ」

ちょっとした呪文がいるからね、
誰にでもできるってわけじゃない。
ええ、どんな花でもいいですよ。
私はトケイソウなんかが変わってて好きですね。
見たいですか?
じゃあひとつやってみましょう。
あなたのお持ちのその青い花を頂いてもよろしいですか?
さあ、………ほら、圧縮した花もまた面白いでしょう。




Story#4「鈴」

釣り上げた大きな魚が船の天板で体を震わすたびに、
何やら音がする。
不思議に思って口をこじあけて中をのぞくと、
ぺっと何かを吐き出した。
天板に転げてりん、と鳴った。
鈴である。
拭き取るとまだきれいで、最近のものらしい。
この海の底で一体何を食べて鈴が腹に入ったのか。
うすら恐くなって魚も鈴もそのまま海に投げ入れた。




Story#5「鍵」

この鍵は万能だ。
どんな扉も開けてしまう。
いや、扉のない壁に、扉を作ることすら可能なのだ。
鍵をそっと壁に近づける。
そこにすっと鍵穴が現れる。
この鍵にぴったりの鍵穴が。
でもどこでもかしこでも開けるのはおよしなさい。
いつかきっと、見なくてもいいものを見てしまうから。




Story#6「赤いボタン」

引き出しの中に、小さな封筒があって、
赤いボタンはそこに入れてある。
私の服の予備ボタンではない。
大切な人のものだ。
でも私はその人の名前を知らない。
二十歳の頃、
旅先で財布を無くして困っていた私に、
ホテルまでの交通費を貸してくれた青年。
名前も言わずバスに飛び乗った彼が、
落としていった赤いボタン。




Story#7「小石」
何にでも化けられるというから、
「じゃあこんなものにもなれるのか」
とその辺に落ちていた小石を拾って差しだすと、
「たやすいことだ」
とあっという間にそっくりに化けた。
素早くポケットから小瓶を取り出し、
小石を入れてふたをした。
封じ込められた悪魔はふてくされたのか、
石の姿のままもう十八年。


==========
7つ連投でお届けしました(笑)

2011年11月3日の
摩耶山リュックサックギャラリーに
展示した「立ち読みオブジェ」の作品です。

写真にありますように、
小物と一緒になった作品なので、
いつかまた展示する機会があれば、
ぜひボトルの中身の小物とともに、
ご覧になっていただければと思います。
コメント
この記事へのコメント
相変わらず素晴らしい!
唸ってしまうほど、素晴らしいっす。

「鍵」がなんとなく好きで、黄色い色鉛筆がすんごく微笑ましくって可愛かった。
ああ、そして、赤いボタン!
どうか、彼に巡り合えますように。
夢の中でも、次の世でも構わないから!!
2012/02/16(木) 10:31:15 | URL | fate [ 編集]
>fateさんへ
いろんなテイストの超超超短編を紡いでみました。
ボタンの彼とはきっと会えると思います♪

私はなんとなく「小石」がお気に入りですw
2012/02/18(土) 00:39:05 | URL | 紺 [ 編集]
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