書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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即興MENU#3-049「菓ノ話」
即興3-49_菓

 めがねをかけるのを忘れないように、と受付で強く言われた。
 指示された道を行き、トンネルをぬけたところに、巨大な温室があらわれた。

 「菓(か)」と呼ばれる砂糖の、原料となる果物は、この温室でしか育たない。
 お菓子作りに最も適した砂糖である「菓の粉(かのこ)」は、その流通量の少なさで値がとても張る。
 でもこの粉を少しでも使えば、完成したお菓子の味が、ぐっといいものとなる。
 いや、味だけでなく、見た目からおいしさのオーラが出るほどなのだ。

           * * * * *

 幸運にも何度かこの「菓の粉」を使ったお菓子を口にする機会があった私は、この不思議で魅力的な味にとりつかれてしまった。

 そしてようやく、その栽培地の見学を、今日することができるのだ。

           * * * * *

「菓の粉の原料となる果物は、数種類ありますが、どれも決して肉眼で見てはいけません。とても不思議な性質なのですが、菓の甘さというのは、味でも匂いでもなく、ほとんどが目から吸収されるのです。もし温室でこの専用めがねを外してしまったら、あの甘さに負けて、もう出られなくなるかもしれませんから」

 係員の言葉が耳に残る。

 私は、めがねを外したいという誘惑に、勝てるだろうか。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「めがね」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “めがね”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(漢字ノ話・五十三次シリーズ)

[お客様]…Sさん(女性)
[お題]…菓(か)
[創作日]…2012年5月19日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


お菓子屋さんへの贈り物でご注文いただきました。
ちょっとだけひねって、パティシエの話ではなくお菓子の原料のお話になっています。
何だか少し危険な香りがする菓の粉ですが、主人公は温室でめがねを外さずにいることができたでしょうか?
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