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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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即興MENU#4-09「いなりずし」
いなりずし

 青いお弁当箱に、いなりずしを五つ、ていねいにつめると、ふたをして、手ぬぐいで器用に包んだ。

 マサコさんは出かける用意をすると、鞄の底にお弁当箱をひっくりかえらないようにそっと入れた。

 弁当箱は息子が幼い頃に使っていたものだ。
 その息子は今はもう、二児の父親で、夫に先立たれたマサコさんは、今は一人で静かに田舎で暮らしている。
 去年までは、一人と一匹だった。
 愛犬のゴロウは病気でなくなったのだった。

           * * * * *

 マサコさんの行く先は、町のはずれの稲荷神社である。
 そこにあるおキツネ様の石像の一つが、ゴロウにとてもよく似ていて、そのことに気がついてから、いなりずしをお供えするようになったのだ。

 お供えをして、辺りを散歩して戻ると、皿の上は空っぽになっていて、何となく、ゴロウがあの世から食べに来てるのではないかと、そんな気がしてひんぱんにいなりずしを持って通っていた。

           * * * * *

 食べていたのは、ゴロウではなかった。
 裏山に住むキツネの一家であった。

 マサコさんが通いはじめて百日目、神社の化身であるところのキツネ一家は、マサコさんの願いをかなえてあげることにした。
 いわゆるお百度参りと似たようなものである。

 今日の帰り道、マサコさんは、ゴロウによく似た子犬をひろうはずだ。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「青」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “青”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…Tさん(男性)
[お題]…いなりずし
[創作日]…2012年8月18日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台

※摩耶山リュックサックマーケットは雷雨で公式中止となりました。
 が、自主メンバーによる闇リュックが開催されました♪


子どもの頃、遠足のお弁当の定番が「いなりずし」でした。
そんなことを思い出しながら、書いてみました。
珍しく、登場人物に名前があります。即興モノは、「私」とか「彼」とか「男」というような呼称が多く、名前がつくことはあまり多くないのですが、今回イメージが浮かんだ年配女性は、なぜだか絶対「マサコさん」だと思ったのです(笑)
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