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書く人・紺の短編作品と書き物雑談。猫好き、本好き、空想好き。写真と言葉と夢から紡ぎ出す、ささやかな物語。
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即興MENU#4-15「エスプレッソ」
エスプレッソ

 赤い石がスプーンの上に乗っていた。

 客の男性は目を見開いてそれを見つめていた。
 先ほど自分でかきまぜた時には、何もなかったはずなのに。

           * * * * *

 そこはエスプレッソを出す店だった。
 といっても、カフェというわけではない。

 メニューはエスプレッソしかないが、客はそれを飲みはしないからだ。

 そこは、いうなれば、宝石屋だった。
 世界にただ一つの石を作って売っているのだ。

           * * * * *

「では、大切なかたのことを想いながら、かきまぜてみて下さい」

 まだ若いマスターはそっと客にエスプレッソを差し出す。

 三十代かとおぼしき客は、二回かきまぜたあと、砂糖を二杯足してさらに三回、ていねいにかきまぜた。そしてマスターに返す。

 マスターは目をとじてゆっくり一回、かきまぜながら、スプーンを上げる。
 黒いエスプレッソの中から、ルビー色の石が顔を出した。

「これが、お客様の色でございます。どうぞお持ちになって下さい。
 お幸せをお祈りしております」

 布に包んで石をしまう。
 これから男は、指輪に加工してもらうつもりだ。

 そして週末、恋人にプロポーズするのだ、この石を渡して。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(完)
これは即興で書き上げた掌編作品。
お客様に「材料」=お題を決めていただき、
短時間で「調理」=作品化するという実験的試み。
実際は原稿用紙等に手書きしたものを、
テキスト化してweb上で公開しています。
明らかな誤字でない限り、書き上げてからの手直しはしないのが原則。
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【作品DATA】

本日の創作メニューは「赤」
 お客さまの選んだ材料(=漢字)で、
 “赤”ではじまる短いお話を
 お作りします。
 それは、
 今日限りの、小さな物語。
(食卓五十音シリーズ)

[お客様]…青空カフェさん(男性)
[お題]…エスプレッソ
[創作日]…2012年9月15日(土)
[創作場所]…摩耶山 掬星台
(摩耶山リュックサックマーケットにて)


あのエスプレッソの艶めく漆黒をみていたら、なにか出てきそうだなーなんて思っていまして、そうしたらこんなお話になりました。
恋愛話というわけではないですけど、ちょっとだけ恋心を絡めてみました。

青空カフェさんのブログ
http://ameblo.jp/aozoracafe-rokko/
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